THE VOICE|special interview:「映画にかける思い」映画業界に関わる著名人の方々に、さまざまな角度やテーマで映画にまつわるお話をしていただきます。/VOICE14 遠藤憲一(俳優)

本当のこと言うとナレーション、苦手です(笑)

映画『るろうに剣心 伝説の最期編』は、2014年9月13日(土)より、大ヒット確実超拡大全国ロードショー!

― 今回はWEBドラマのナレーションということで、オファーを受けた時はいかがでしたか?

WEBドラマなので、共演者の誰かとの掛け合いで進行するものかと思っていたら、ほぼ自分だけだったので、 ナレーションは難しかったですね。原稿をただ読んでいるだけにならないように、ささいな感情の変化をはじめ、 いろいろなものを混ぜられればいいなと思って、収録当日はナレーションしていましたね。旅をしている高揚感とか、 その街の熱気を吸収している時とか、なるべく心の中を動かして、台本を読むようには心がけてはいましたね。

― ロバート・ハリス氏による脚本は、まるで自分が旅をしているような気分になりますね。 大人の男性が、まるで物語の主人公になったかのように感情移入して共感できる内容です。

そうですね。街の風物もちゃんと紹介されているし、 全体の中でどういう設定にするか大変な作業だったと思います。 旅をして解放されていく心情、女性との出会い、働いてみるとか、 そういうエピソードを、街を紹介しながら見事なバランスで書かれているストーリーだなと思いました。 自分自身、旅が好きですが、最近はプライベートでは海外には行けてないですね。 若い時分は放浪癖があったので、時間があれば無目的で旅をしたいですね。

― 渋い声のナレーションが今作でも魅力的ですが、“あの声”を出すコツは何でしょうか?

いや、本当のこと言うとナレーション、苦手です(笑)。 初めて声の仕事をいただいた時はTVCMのキャッチだったので、2行程度の分量でしたが、 ドキュメンタリーはすごく練習が要ります。たいがい準備期間が短いので練習時間がないけれど、 今回は時間があったので、感情の動かし方とか、勉強にもなりましたね。自分の中で何回も練りながら臨めたので、 なんとか落ち着いてナレーションの収録を終えました。でも本当に不得手なんですよ(笑)。

子供の頃は映画って、何て怖いんだって思っていました(笑)

― さて、遠藤さんはナレーションだけでなく、本業の俳優としても大人気でテレビドラマ、 映画と出演本数が絶えないですが、たとえば自分の出演作をシネコンに観に行く機会は?

「遠藤憲一(俳優)」

実際、最近はなかなか行けてないですね。DVDで観るとか、遅れて観ていることが多いですかね。 試写の機会で観ることはありますが、基本的に自分が出た作品を他人と一緒に観ることはないですかね(笑)。 素性を隠してこっそり観るってこともよさそうですけど、 劇場で観る映画はなるべく自分が出ていないモノを探そうとは思っていますよ(笑)。 ただ、何かの役柄に入っている時に、違う世界観にどっぷり浸るってことは、なかなか難しいですね。

― なるほど。それでは俳優や映画人になる以前の、初めての映画体験などはいかがですか?

シネコンの思い出じゃないですが、いまは取り壊しちゃった渋谷の東急の6階か7階に映画館があって、 よく行っていました。初めて一人で観た映画が、ジョン・ボイドの西部劇で、ブルース・リー映画なども観ました。 最初に観た映画は、子どもの頃におふくろが連れて行ってくれた『ジョニーは戦場へ行った』なんですよ(笑)。 感動的なストーリーなのに、子供心にすごく怖くてね。次に観た映画が、いとこと行った勝新太郎さんの『座頭市』。 バッサバッサ斬っていて(笑)。子供の頃は映画って、何て怖いんだって思っていました(笑)。

― トラウマですよね(笑)。その原体験が、いまの役柄や演技に活きている、と思いますか?

どうですかねえ(笑)。こんなコワモテ顔なので、“そういう作品”にはよく呼ばれましたが(笑)、 ただ、アクション映画をVシネ時代に多く撮っていた時に、予算も少ないので現場で知恵を出し合う作業が必須でした。 全員で知恵を出して、スリリングにする。その時に、楽しく感じたんですよ。アクションが好きっていう感覚じゃなく、 モノを作り上げていく過程が楽しいと。その意味では、多く映画を観た経験が活きているかもしれないです。

まだまだすごい映画って、この先たくさん出てくると思う。だから僕は楽しみですよ

「遠藤憲一(俳優)」

― さて、おかげさまで「イオンシネマ」は誕生一周年を迎え、多くのお客さまにご満足いただけております。 その中で映画人としてシネコンに対する期待や要望などはありますか?

映画製作は、すべての工程をひっくるめて膨大なエネルギーを注ぐ特異な事業で、 一番怖いことはヒットしないことですよね。アテが外れたら相当なダメージを負うので、 だからシネコンの方々に何かを、って言うことよりも、せっかく上映までいったなら、 できるだけ多くの人たちに足を運んでいただいて、すべての映画が当たってほしいですね。 そうすれば、関わった映画人、すべてが報われると思うので、何とか当たってほしいと思います。

― もちろん「イオンシネマ」でもモール中で宣伝展開など、さまざまな工夫をしています。

そういう時代だからですかね。当てるためには、一生懸命にやれることはやっておくみたいなことですよね。 映画って先が読めないので、最近は出演する時に責任を強く感じるようになりました。当たってほしいっていうね。 宣伝の方々も大変だと思うし、博打みたいじゃないですか。だから、バラエティーとかは得意じゃないけれど、 宣伝のためには苦手だけれど、出ていくようにしています。ただ待ってたんじゃダメって、気配は感じますよ。

― 最後にうかがいますが、今を生きる映画人として映画界の未来は、どう映っていますか?

自分自身が忙しくて映画館に行けてはいないけれど、消えることはない文化だと思っているので、 暗くはないと思いますよ。ある映画が観たい、だから映画館へ行くというシンプルなスタイルは、 永遠に変わることはないと思います。見せ方は3Dとか風を吹かすとか、いろいろあると思いますが、 まだまだ表現だってあると思う。ピアノだって、あれだけの鍵盤の数で無数の曲が生まれているじゃないですか。 それと同じで、誰がどんな感性で台本書いて、監督して、演じてって、そういう才能の組み合わせで生み出していくと思うので、 まだまだすごい映画って、この先たくさん出てくると思う。だから僕は楽しみですよ。

Profile

【VOICE14】遠藤憲一(俳優)/1961年6月28日、東京都生まれ。テレビ初出演は1983年のNHK時代劇「壬生の恋歌」。個性派俳優として映画、ドラマなど幅広く活躍。主な映画出演作に『クライマーズ・ハイ』(09)、『ツナグ』(12)、『劇場版SPEC~結(クローズ)』(13)、『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』(14)。ドラマ出演作に「不毛地帯」(10)、「てっぱん」(11)、「ストロベリーナイト」(12)、「安堂ロイド~A.I.knowsLOVE?~」(13)、「家族狩り」(14)、「ロング・グッドバイ」(14)、「ドクターX~外科医・大門未知子」(14)。ナレーション作品に『世界温泉遺産』『NHKスペシャル』などがある。
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取材・構成・撮影/鴇田 崇(OFFICE NIAGARA)

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