THE VOICE|special interview:「映画にかける思い」映画業界に関わる著名人の方々に、さまざまな角度やテーマで映画にまつわるお話をしていただきます。/VOICE18 監督 雨宮慶太

一度見せたキャラクターは、作り手は大事にしないといけない

― ファン待望の“牙狼<GARO>”シリーズ最新作の誕生ですが、劇場版とそれに続くTVシリーズが連動しています。まず劇場版のコンセプトは、どのように決めていったのでしょうか?

『牙狼<GARO>-GOLD STORM-翔』

もともと牙狼はアクションが出発点ですが、これまでの主演を務めた小西(遼生)も中山(麻聖)も上手な方々で、スタントもこなしてくれましたが、今回の栗山(航)はダントツに優れています。とても身体能力が高い俳優なので、彼の長所を最大限に出す方法を深く考え、主人公が本当に戦っているように感じるリアルな感覚が観客に伝わるような見せ方に特化したいということが、いままでのシリーズとの最大の違い、でしょうかね。

― アクション表現の幅が広がると、アクションに意味を持たすことも可能になりますよね。

そうですね。主人公が必死に戦っているというテーマが浮き彫りになってくるので、それは大事なことだと思っていました。そもそもスタントマンを使った場合、カット割りをする必要がありますが、俳優が動けると黄金騎士である道外流牙がちゃんと動いていることがよく伝わる。だから吹替えを最小限で本人が頑張ってくれてよかったと思います。

― 今回はとりわけ、牙狼の生みの親である雨宮監督が道外流牙シリーズを撮るという事で、この新シリーズ実現に至るまで、どういう想いでプロジェクトを進めていましたか?

『牙狼<GARO>-GOLD STORM-翔』

実はそこまで考える間もなく作り続けているので、自分ではよくわからないですが、まず「<GARO>~闇を照らす者~」(13)で登場した道外流牙というキャラクターが、そこで終わってしまうことがあれば、もったいないなと思っていました。前の冴島鋼牙も何度もやっているので、道外流牙も話の広がりや違うドラマを用意することで世界観が拡大するはずだと。一度見せたキャラクターは、作り手は大事にしないといけないと思っているので。

シネコンになってからはある程度多彩なプログラムが選べるので、観ようと思った映画じゃない映画と出会う

― ここで一度劇場の話に移りますが、最近シネコンに映画を観に行く時間はありますか?

映画が観やすくなったと思います。一館でメイン作品を観ることが主流だった時代は、見逃して大変だったけれど、シネコンになってからはある程度多彩なプログラムが選べるので、観ようと思った映画じゃない映画と出会う機会にもなって、そいうことも起こり得る。行ける時は行きますが、最近は暇がなくて行けない(笑)。観ようと思った映画がどんどん終わっちゃいますが、3Dの映画はなるべく観るようにしていますね。ブルーレイで観ると弱冠違って、たぶんスクリーンのサイズで試写計算していて大きなメガネで観ないと奥行きが伝わらないような気がしますね。最近では『ベイマックス』の技術がすごかったですよ。

― また、シネコンで働いている現場のスタッフへのエールや、何かリクエストありますか?

雨宮慶太監督

それは難しい質問ですね(笑)。ただ、映画を観る行為が今は家の中だけでなく、どこでもできてしまい、そういう現象になってしまっている。ちょっと距離が離れた映画館で他人と一緒に観る行為は、何か不可価値がないともうダメな気がします。そうすると巨大なスクリーンとか3Dとか、そういう話。観る人はコンテンツが好きなはずなので、そのコンテンツとパッケージで見せていく方法があると思う。好きな俳優さんが来て、ちょっとトークショーをするとか特別な映像を見せるとか、映画だけ作っていていいという時代でない。

― その点、“牙狼”シリーズは早くから多面的な展開をしていて、人気も獲得していますね。

一点突破だと、思考停止しそうです。僕も映画を作っている人間ですが、映画だけを作っている意識はなくて、コンテンツを作っている意識が強い。もちろん映像が主軸だけれども、その周辺にも力を入れている。その周辺があってのキャラクターでもあると思うので、そこと上手く連動できるものを発明しなくてはいけないレベルまできていると思う。それが当たれば皆で模倣するので、またそれが主流になる。何かありそうな気がしますけどね。

僕らが観ていた特撮映画の空気感は、今の時代にはないような気がしています

― ところで、小さい時からいまのような映像クリエイターの仕事を目指していましたか?

漠然となりたいなとは思っていましたね。円谷英二みたいな特撮の映像を作る人になりたいと思っていました。でも僕がいまやっていることは特撮かって言うと、そうとも言い切れない。そういうカテゴリーじゃなくて、アクション映画に近い。特撮というジャンルがほぼ死滅しているような気がしていて、あっても映画の中の部分的なこと。僕らが観ていた特撮映画の空気感は、今の時代にはないような気がしています。怪獣が出なくても戦争や災害映画で特撮は成立するけれど、いまはキャラクターヒーローものを指すでしょうか。

― さて、“牙狼”シリーズの最新作ですが、劇場版に続くTVシリーズでは、男女の濃厚なキャラクターが登場するそうですね。ペアで敵対する展開は、新鮮な印象だと思います。

雨宮慶太監督

そうなれればいいなって思います。流牙と莉杏に対するジンガとアミリの存在は、表現として、ずっと対照的な存在として追っかけて描いているので、そこで起こる現象は楽しみにしてもらうといいかなって思います。構造的には、正義と悪の男女が激突するものなので、そこはシンプルに楽しめるとは思いますけど、シンプルだけじゃない含みもあるので。

― そこには深いドラマもありそうですよね。新しい展開を用意した理由は何でしょうか?

いままでの敵対の構図というか、そこに収まっちゃうと前にも観たことがあると思われちゃうので、流牙と莉杏、魔戒騎士と魔戒法師のコンビがいて、その両者に対して強烈なキャラクターが1人か? 5人か? という案があるなか、敵も男女がいいだろうということになりました。この構造は、面白いと思います。本当にジンガ役の井上正大君とアミリ役の松野井雅さんのキャスティングがあったので実現できたこと。だからこそ、道外流牙の魅力も立っていくと思うので、牙狼を知っている人も知らない人も期待してほしいですね。

Profile


							雨宮慶太 映画監督:1959年生まれ。千葉県出身。1978年、阿佐ヶ谷美術専門学校入学後、デンフィルムエフェクト入社。1983年、有限会社CROWDを設立し、TV・映画・ゲームなどの数々のキャラクターデザインを手掛ける。「未来忍者 慶雲機忍外伝」(88)にて監督デビュー。「ゼイラム」(91)「タオの月」「鉄甲」(97)「鉄甲機ミカヅキ」(00)など数々の監督作品を発表し、評価を得る。2005年、原作・総監督を務める「牙狼<GARO>」によって“大人向け特撮”という新ジャンルを確立。現在も、映画監督・イラストレーター・キャラクターデザイナーとして多岐に渡って活躍する。
取材・構成・撮影/鴇田 崇(OFFICE NIAGARA)

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