THE VOICE|special interview:「映画にかける思い」映画業界に関わる著名人の方々に、さまざまな角度やテーマで映画にまつわるお話をしていただきます。/VOICE36 俳優 松坂桃李

実話だからこそ、胸に突き刺さる日常の瞬間がいくつもある

キセキ ―あの日のソビト―

― 「キセキ ―あの日のソビト―」はGReeeeNの名曲誕生にまつわる実話の映画化です。この企画を最初に聞いた時はどう思いました?

台本を読み終わった時に改めて、本当に実話なんだって実感しました。紆余曲折がありながらも夢を叶えていく王道のストーリーですが、実話だからこそ、そこには僕らの胸に突き刺さる日常の瞬間がいくつもあって。そういう意味では近年、なかなかない青春映画だと思いますね。

― 撮影に入る前にJINさんとHIDEさんには実際に会われたんですか?

JINさんとHIDEさん、僕とヒデを演じた菅田(将暉)の4人で食事会をさせていただきました。JINさんは、「窓を開けて最初に風を感じた時に、この曲が来るのか来ないのか、なんとなくわかるんだよね」と、感覚的な表現をされる方なのですが、その言葉には説得力があって惹きつけられる。僕も人を惹きつける吸引力みたいなものを、どこかで出せたらいいなと思って演じました。

― 菅田さんとは兄弟を演じるうえで、事前になにか話し合われましたか?

兄弟には兄弟ならではの距離感や空気感があると思うんですが、菅田とはなにも考えずにスッと兄弟になれました。“初めまして”の人が相手だったら話し合いも必要だったかもしれないけど、そもそも話し合うという発想がありませんでした(笑)。

― 2人の撮影で印象に残っていることは?

やっぱりアーケード街でのケンカのシーンですね。『王様のボク』(12)で菅田と共演した時、2人でただナポリタンを食べているシーンを撮影したのですが、気がついたらカットがかかっていたことがあって。お互いに「不思議な感覚だね~」と話していたのですが、その時の感覚がこのケンカのシーンにもありました。撮り終わった時に、2人ほぼ同時に「『王様とボク』を思い出した~」って言って、それがすごく印象的で兄弟っぽいなと思いました。

来年が20代最後の年に差しかかるので、やれることをすべてやっておきたい

松坂桃李

― ところで、父親の反対を押し切って、音楽の道に進むジンの役は、俳優の道を志した松坂さんと重なるところもあるのでは?

そうですね。僕もこの仕事を始める時は父親に反対されたので。僕の場合は本当に時間をかけて説得して、どこかのタイミングから応援してもらえるようになったんですけど、やりたいことに突き進むジンの気持ちはすごくわかる。上手くいかない時の、“でも、親に言っちゃったしな~”という感覚もリアルでしたね。

― ロッカーになることを夢見ていたジンは、人生の途中で「人にはそれぞれの役割がある」と言ってプロデューサーに転身します。彼のその考えについてはどう思いますか?

なにかを得る代わりに、自分の大切ななにかを捨てなくてはいけないということだと思うんですけど、そこにはお気に入りのジャケットを脱ぐような寂しさがあるし、勇気と決断力がいる。人というのはそうやって成長していくのかもしれませんが、とても怖いことなので何回もはできないなと思います。

― ヒデたちが劇中で結成するグリーンボーイズのCDが、17年1月24日(火)に実際にリリースされるようですね。

そうなんです。プロデューサーの僕のイチオシです(笑)。同じ曲でもGReeeeNさんとはまた違うオリジナリティがある。カバーという感じでもなく、本当にオリジナルの曲として聞かせることができるのが、彼ら4人(菅田将暉、横浜流星、成田凌、杉野遥亮)の強みですね。

― 最近の松坂さんはドラマ、映画、舞台を股にかけておもしろい作品に次々に出演されていますね。

来年が20代最後の年に差しかかるので、30代にいい作品、いい役、いい監督と出会えるように、来年から再来年はやれることをすべてやっておきたいなという想いがあります。それで30代を迎えて、40代にしっかり進んでいけるようになりたいと思っています。

Profile

松坂桃李 俳優 1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。2009年に「侍戦隊シンケンジャー」で俳優デビュー。2012年に映画「ツナグ」で映画単独初主演を果たし、2012年にNHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」の信郎役でブレイク。そのほかの代表作に、「万能鑑定士Q ―モナ・リザの瞳―」(14)、「マエストロ!」(15)、「秘密 THE TOP SECRET」「真田十勇士」「湯を沸かすほどの熱い愛」(ともに16)などがある。待機作は18年公開の「不能犯」。
撮影=Kyosuke Azuma (tokyojork) 取材・文=イソガイマサト スタイリング=伊藤省吾(sitor)ヘアメイク=高橋幸一(Nestation )

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