THE VOICE|special interview:「映画にかける思い」映画業界に関わる著名人の方々に、さまざまな角度やテーマで映画にまつわるお話をしていただきます。/VOICE50 女優 篠原涼子

吉永小百合さんは女優の先輩ではなく、大スター 本当に光栄に思います

北の桜守

―本作で演じられた、修二郎(堺 雅人)の妻・真理は帰国子女という役柄ですが、 どのように準備をされて臨まれたのでしょうか?

英語セリフの練習をしました。でも、セリフが一個くらいしかなかったので、滝田洋二郎監督の優しさに救われたと思いました。 帰国子女っぽいことを深く意識しなかったのですが、日本語が上手くない感じで演じたほうがいいのかな、 ということを考えたりもしました。メイクと髪型は派手なルックスで、むしろあの当時の日本では 浮いている感じのキャラクターになっています。衣装などカタチに救われたということはあったかもしれません。

―普遍的なテーマが感動を呼びますが、真理を演じて、作品への想いはいかがですか?

壮大な作品で、豪華なキャストの方々をはじめ、普通の映画と比べるとスケールが全然違いますよね。 吉永小百合さんは、わたしにとっては女優の先輩ではなくスターなので、 お目にかかれると、ましてや共演できるとも思っていなかったので、本当に光栄なことだなと思っております。

―撮影中、吉永さんとお話しする機会などはありましたか?

ありました。まるで女子高生の頃を思い出すかのように、スポーツや食の話などプライベートな話題を、 ずっとお話させていただきました。すごく気さくな方なので、おこがましいですが、友だちになれそうな感覚で お話してしまいました。プロフェッショナルで手の届かない存在だけれど、いつも謙虚なんです。そのお姿を見て、 本当のプロだなと思いました。オファーをいただいた時、ふたつ返事で出演させていただいて本当によかったです。

お父さんって涙もろいんだって、そういうことを知れた場所が映画館――

篠原涼子

―ところで、「イオンシネマ」のようなシネコンへは普段行かれますか?

もちろん行きます。子どもの頃から映画館へ行くことが好きで、映画館は特別感がある場所ですよね。 お金を払って、暗闇の中で大きなスクリーンで、自分が観たい映像が流れてきて、そこにいるだけで 不思議な空間に囚われるような場所。映画館の匂いも好きです。群馬県の桐生市にオリオン座という映画館が昔あって、 小学校低学年の頃、そこにいつも行っていました。本当に、そこで育ったようなもので好きでしたね。

―最初に、映画館で観た作品は覚えていますか?

最初に観たのは、たのきんトリオが出ていた青春系の映画『嵐を呼ぶ男』で、当時はぎゅうぎゅうの立ち見でした。 体が小さかったのでつぶされそうで、危なかったです。まったく観えずに音だけ、光だけを感じて、 マッチのドラムの音だけ聞こえました(笑)。あとは中森明菜さんの『愛・旅立ち』、 『南極物語』などを覚えています。父は普段泣かない人ですが、映画館で号泣していたことを覚えています。 ああ、お父さんって涙もろいんだって、そういうことを知れた場所が映画館。 今でも映画館で観ていると、そういうことも思い出しますね。

―素敵なエピソードですね。そして、実は映画少女だったわけですね。

上京してからも映画館には通ってましたね。演じることは当時そこまで得意じゃなかったけれど、 映画館へ行くことは相変わらず好きでした。若かったせいか、邦画よりも洋画をよく観ていました。 東京では新宿、渋谷、最近はどこにでも行きますが、午前中の回に子どもたちと吹替え版を観に行くことが多いですね。 子どもたちもスクリーンで体感することが好きみたいです。子どもたちと共有することで映画館がもっと好きになっています。

冷静になって見つめ直さなければいけないことも、たくさんあるような気がします

北の桜守

―今回の『北の桜守』では、義理の母との関係性に葛藤する場面もありましたが、お芝居をする上で気をつけたことは何でしょうか?

わたしの実体験と照らし合わせても、それはまったく違うものでしたが、注ぐ愛情は同じだと思うんですよね。 実際、そこまで真理とは自分が似ていないので、余計に彼女のキャラクターに専念しようと思いました。 吉永さんはチャーミングでかわいらしい、芯がしっかりしている役柄を演じていらしたので、修二郎さんとのやりとりを見ながら、 わたし自身が吉永さん演じるてつを支えなくてはいけないという眼差しを大切に、お芝居に集中していました。

―完成した映画を観て、ご自身ではどういうメッセージを受け止めましたか?

戦争のお話ではありますが、その時代の人たちを中心に暮らしをしっかりと描いていて、それを辛いだけに終始せず、 優しく映像化していると思いました。そこではしっかりと今の世の中の人たちに向けて忘れちゃいけないことを描いていている。 辛い思いをして乗り越えた昔の母親たちが子どもたちを育て、その子が成長して社会に出て今があることまで描いている。 そういうところは観てほしいです。今の日本があることにつながっていくお話なので。

―当時の力強い人間ドラマ、家族のドラマは、現代で観ると学びが非常に多いですね。

修二郎さんとお母さんとのきずなのなかで、よく言う嫁と姑じゃないけれど、そういう関係性も観てほしいですね。 今の世の中ではおかしなことに映っているかもしれないけれど、冷静になって見つめ直さなければいけないことも、 たくさんあるような気がしてます。

Profile

群馬県出身。1990年デビュー。主な出演作にテレビドラマ「アンフェア」シリーズ(06~15/KTV)、
						「ラスト♡シンデレラ」(13/CX)、SPドラマ「愛を乞うひと」(17/YTV)、「民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~」(17/CX)、映画では、
						映画『アンフェア -the end-』(15)など。公開待機作に、大根仁監督の主演映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』がある。
取材・構成・撮影/鴇田 崇(OFFICE NIAGARA)

イベント&サービス案内トップに戻る


  • 前のページに戻る
  • ページの先頭に戻る