THE VOICE|俳優・山田裕貴 / 俳優・佐藤二朗

SPECIAL INTERVIEW

映画にかける思い

映画業界に関わる著名人の方々に、様々な角度やテーマで映画にまつわるお話をまとめました。

山田 裕貴俳優

佐藤 二朗俳優

「原作を読み、その悪魔的な面白さに驚愕しました」

爆弾

──呉勝浩氏によるベストセラー小説の実写化となった『爆弾』ですが、最初に脚本を読まれた感想はいかがでしたか?

山田: お話をいただいて最初に原作を読みましたが、あまりにも面白かったので、これが2時間ですむのかなと。上・中・下が必要になるなと思ったくらいでした。でも、『東京リベンジャーズ』シリーズも手がけた岡田翔太プロデューサーが、「山田くんのパブリックイメージはみんなが思うところがあると思うけれど、僕が思うのは本当はこの類家(警視庁捜査一課・強行犯捜査係の刑事で、スズキタゴサクと真っ向から対峙する交渉人)という役だと思うからオファーした」と。それで脚本を読んでみたら、岡田さんの気持ちがよくわかるなと思うことばっかりだったので(苦笑)、僕のことをよく見てくださっていたのだなと思いました。

爆弾

佐藤: オファーがきたくらいに原作を読み、その悪魔的な面白さに驚愕しました。しかも僕とは共通点が多かった。どこにでもいそうな風貌、小太りの中年、どこにでもありそうなスズキタゴサクという名前で、僕は佐藤二朗。で、中日ファン(笑)。あとこれは本当にびっくりしたのですが、これは野方署が舞台なんですけど、僕が東京で初めて住んだ街が野方だったんですよ。すごく共通点が多かった。なにより本当に面白い作品だったので、嬉々としてお受けした感じです。

爆弾

──刑事と謎の男、どのように役を解釈して役作りをされましたか?

佐藤: 僕自身悪役に感情移入するタイプで、今までハリウッド映画を含め、本当に魅力的な悪役がたくさんいましたが、悪のカリスマと呼ばれる役には、悪の哲学がありますよね。でも、どこにでもいそうな風貌のスズキタゴサクには、それがない。カリスマ性もなければ、悪の哲学もない。さらに言うと、特殊な能力、力が強い、人とは違う考え方を持っているということもなく、むしろ誰しもが心にフタをしていたり、誰しもが心に持っている悪意を指し、「そういうことってあなたたちにもあるでしょう?」ということを皆に突きつけてくる。そういう人物像は意識しました。後はセリフが膨大でしたけれど、楽しんでやろうと思いました。

爆弾

山田: 僕は天才っぽくみえる動きというか、早口でしゃべったり、ペン回しも含め、頭が良さそうに見えることを意識していました(笑)。僕はタゴサクのほうが演じることが難しいと思っていて、二朗さんがそれを見事に演じられているんです。今までだったらジョーカーとか、みんながカッコいいかもと思うような悪役像を作ることについては、僕らはそういう映画を観ていますし、学べるじゃないですか。

佐藤: スズキタゴサクは普通のおじさんですし(笑)。

山田: そうなんです。でも、そのためにはめちゃくちゃ創造性がいるし、親近感も必要だと思うけれど、どうしてこの人はこんなに奥の底が黒いというか、黒じゃなくて、たぶんきっと光になりたかった男の人だろうと。もしかしたら普通に生きたかっただけの人を表現している姿を観ていると、本当にすごいなと思うんです。

「タゴサクを理解できる人間は彼(類家)しかいないと思えた」

爆弾
爆弾
爆弾

――緊迫感ある取調室のシーンをはじめ、撮影はいかがでしたか?

佐藤: 僕の前に座る刑事は最初が染谷将太さん、次に渡部篤郎さん、そして山田裕貴といういずれも一線級の俳優で、本当に楽しい日々でした。僕自身は対決したいとはまったく思っていなくて、ふたりで高みに登っていくということをしないといけなかったんです。イギリスのある舞台の演出家が蹴るほう蹴られるほう、両方面白くないとダメなんだと。これはコメディの話なんだけど、どっちだけでもつまらないと。このメンツなら大丈夫だと思っていましたが、ふたりで上がっていくことが楽しかったです。

山田: 僕は演じた類家として、タゴサクを理解できる人間は彼(類家)しかいないなと思えたことはもちろんよかったですし、それ以上に二朗さんが表現として、『羊たちの沈黙』(91)のレクター博士やいろいろな悪役のカタチをすべてわかったうえで普通を目指され、すべてをわかったうえでタゴサクを緻密に表現していらっしゃると感じたんです。

二朗さん自身は、「僕は最後までタゴサクが何者か(完全には)わかっちゃいけない」とおっしゃっていたんですけど、僕はわかっていなきゃできないだろうなと思ったんです。そして、たぶんご本人はわかっていると僕は感じたし、役を理解できているかもしれないという思いが自信になったりすると思うんです。そういうことを何気なくあの現場で表現している二朗さんが、すごかったなと。すべてを一瞬であの表現まで持っていく感覚ですよね。言ってほしくないかもしれないけれど、僕はわかっていてやっていると思ったし、そこに俳優としての妙をとても感じました。

佐藤: 僕はほめられることは大好きなので、僕をほめるのに遠慮はいらないよ(笑)。

山田: すごい俳優さんだなと。それって、表現として簡単に言えるんですけど、そこにいろいろな意味が含まれているすごい俳優さんだなと思いました。

「自信を持ってみなさんに勧められる映画です!」

爆弾

――普段、映画館で映画を観られることもあるかと思いますが、映画館で映画を鑑賞する醍醐味についてどのように思われますか?

山田: 僕はマーベル、DC、アメコミ原作映画が本当に大好きで、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)でヒーローが大集合するシーンがあるのですが、それを映画館で観た時に、海外じゃないのに立ち上がってしまうくらいの感動だったんです。映画館の楽しみ方という話とは違うかもしれませんが、この体験をどうやって日本で味わってもらえるのか、それを自分のお芝居でするには、どこまでの研鑽と努力をすれば辿り着くのか、そんなことを思ったことがあります。本当に感動した時は涙も出なければ、実際は立ち上がることができないくらい感動していたのですが、あの映画体験を一生忘れないだろうなと思わせた作り手たちはすごい。お芝居をする人たちはすごいと思いました。

佐藤: それこそ僕は、『爆弾』は映画館で観たほうがいいと思いました。エスカレートしていく面白さ、ドキドキが、あの音響、あの大きなスクリーンで楽しめる。この映画『爆弾』は映画館で極上の映画体験ができる感じがあったので、繰り返しですけれど、そのためには劇場でぜひ観てほしい。

爆弾

――改めまして映画を楽しみにしているみなさんへメッセージをお願いします。

山田: 自分は面白いと思ったとしても周囲がどう思っているかはわからないものなのですが、二朗さんが完成した本編を観た日が一緒に取材を受ける日で、本当に面白かったと言ってくださったので、まずそこで安心しました。確実に面白い作品になったことは、みなさんのおかげなのですが、自分だけじゃなく、みなさんの総合力がすごかったという、この作品のチーム力を感じたのが共通項としてうれしかったです。本当に面白いものができたと思っていますので、この想いが伝わればいいなと思います。

佐藤: 山田裕貴は元より、刑事さんたちもみんなとてつもない色気があると思いました。要するに仲間たちを守ること以上に、無辜の民、罪のない市民を絶対に守らなければいけない悲壮なまでの覚悟が、僕には色気に見えたかどうかわからないけれど、素晴らしかった。特殊部隊のアクションも、隅から隅まで本当はこうかもしれないと思わせるものがありました。自信を持ってみなさんに勧められる映画です!

PROFILEプロフィール

山田裕貴

山田 裕貴俳優
 >>(類家<警視庁捜査一課・強行犯捜査係>)

山田 裕貴俳優
 >>(類家<警視庁捜査一課・強行犯捜査係>)

BIOGRAPHY

1990年9月18日生まれ、愛知県出身。2011年「海賊戦隊ゴーカイジャー」で俳優デビュー。2024年は『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命- / -決戦-』、『キングダム 運命の炎』『ゴジラ-1.0』『BLUE GIANT』での活躍が注目を集め、第47回日本アカデミー賞話題賞を受賞。今年は『木の上の軍隊』『ベートーヴェン捏造』など主演作が相次いで公開。

PROFILEプロフィール

田中 麗奈

佐藤 二朗俳優
 >>(スズキタゴサク)

佐藤 二朗俳優
 >>(スズキタゴサク)

BIOGRAPHY

1969年5月7日生まれ、愛知県出身。1996年に演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げ、本格的に俳優活動を開始。自らの体験をもとにした『memo』(08)や、主辛する劇団の同名作品の映画化『はるヲうるひと』(21)では監督・脚本・出演を務めた。『あんのこと』(24)で、第48回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。今後は『新解釈・幕末伝』(12月19日)の公開が控えている。

取材・構成/鴇田 崇

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