THE VOICE|special interview:「映画にかける思い」映画業界に関わる著名人の方々に、さまざまな角度やテーマで映画にまつわるお話をしていただきます。/VOICE15 監督 前田弘二・脚本家 高田亮

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大騒ぎした後に、何かついてくるみたいな。お土産がある映画にしたいなって

― 今作のようにハワイを舞台に映画を作る上では、どういうコンセプトで臨みましたか?

映画『わたしのハワイの歩きかた』

前田:

おもちゃ箱をひっくり返していろいろなおもちゃが出てくるようなイメージの映画を撮りたいなと思いました。 楽しいけれど、時たまグサッときて自分のことのように思えるとか、いろいろな要素を用意して。 結果として、スカッとしてもらえる映画になればと。

高田:

ハワイを舞台にした映画を、というオーダーがあった時に、これはお祭りだと。 相当はっちゃけた映画にしたいなという前田監督の希望もあったので、イベント感満載で脚本化しました。 ちょっと週末、ハワイでも行くかと思ってくれるように書いていましたね。

前田:

楽しい、はじけるほうのハワイです。バカンス映画です。 そこをひねらず、ストレートにハワイでバカンスして、毎晩遊びまくる。入口は完全に遊びですね。 でも、入口と出口でまったく違う映画にしようと思って。

高田:

癒し系という要素ももちろんありますが、ハワイを一周するような、なかなかできないことを主人公が代わりにやってくれるっていうこと。 そこが楽しくて痛快だと思います。しかも大騒ぎした後に、何かついてくるみたいな。お土産がある映画にしたいなって。

― 映画を作る上で、自分たちが観たい映画を観たい、撮りたい、という発想が大切ですか?

映画『わたしのハワイの歩きかた』

高田:

それもありますね。感覚ですが、こういうカンジの映画があれば、最高だよなって、映画を観ていて思うことがあるじゃないですか。 それは、いろいろなジャンルであります。

前田:

いろいろな映画があっていいですよね。それぞれが認めあう中で、観て気持ちよかったスカッとしたという映画が、堂々とあっていい。 そういう映画を作ってみたいですね。

高田:

こうやってハワイを舞台に映画を作ると、ありがちなパターンがあるから、そうはしたくないみたいな会話はよくしました。 それがいい悪いは置いておいて、ほのぼのしちゃって、自然に癒されるみたいな(笑)。僕たちは、そういう入口は止めようと思いました。

昔の名画座的な役割を担うシネコンが、あってもいいかも

― ところで、現在はシネコン全盛ですが、想い出の映画館や最初の映画を教えてください。

映画監督 前田弘二

前田:

僕は地元が種子島で、中学生の頃に地元の映画館でよく映画を観ていました。 当時は2本立てで、『スパルタンX』(84)とか、もっと子供の頃などはマンガ祭りとか観ていたと思いますが、小学校一年か二年で『スパルタンX』(84)に興奮しました。

高田:

小1で、すごい(笑)。僕は『バンビ』(42)ですね。 当時は、川崎の映画館で、映画館に行く前の車の中でトイレに行きたくてなって、苦しかった思い出がありますね(笑)。 最近、久々に観る機会がありましたが、とても凝ったアニメーションでびっくりしました。

前田:

小さな街の小さな映画館だったので、支配人と仲良くなって一人で行けるわけですよ。 だから、小学生で『エンゼル・ハート』(87)とか観ていました。 「人間には、知ってはならないことがある―」って(笑)。観ちゃいけないモノを観た気がして、ゾクゾクしました。

― 映画館が商店街の一店舗みたいなポジションですね。最近では本当に観なくなりました。

前田:

そうですね。閉館の時、『カジュアリティーズ』(89)を最後に観ました。 今のシネコンみたいに観る映画を選べなかった環境が、ちょっと懐かしいですよね。

高田:

ちゃんと『バンビ』(42)とか観なよ(笑)。小学生でハードな作品ばっかりですよね。

― さて、おかげさまで「イオンシネマ」は誕生一周年を迎え、多くのお客さまにご満足いただけております。 その中で映画人としてシネコンに対する期待や要望などはありますか?

脚本家 高田亮

前田:

昔は入りやすかったですよね。どこから観てもよかったし、途中で出るとか普通で。 タバコ吸っている人もいた(笑)。入れ替え制になってから、時間を守る必要が出ちゃって。

高田:

最初にシネコンに行った時に感じたことは、イベント感ですね。ああいうの、すごくいいですよね。 映画館がお祭りの会場みたいで、ウチの奥さんのお母さんはポップコーンを食べたいから映画館に行くみたいなことを言っていて、キャラメル味がどうとか(笑)。

前田:

行ってから観る映画を決めるってアリですよね。 ちょうど空いた時間に観ちゃおうかみたいな時とか。気分をチョイスできるというか、その場で迷っていいわけですからね。

高田:

それと、近所にあったみたいな昔の名画座的な役割を担うシネコンが、あってもいいかもですよね。 わりと小さいカフェ的な規模でやってほしい、というのはありますかね。

前田:

入れ替えじゃなくて、2本立てで何度観ても、いつ出てもいい気軽な感じがほしいですかね。 映画って、ちょっとした時間つぶしみたいな感覚もアリだったと思うんですよね。

高田:

並木座とか本当に高齢の方々が多くて、「わ、森雅之」とか、いちいち言ったりする(笑)。 おはぎを食べる音がうるさかぅたり、ああいう雑然とした感じは楽しかったですね。

前田:

やたらとストーリーを言う人もいましたよね。自由な感じが戻ってもいいかもです。

夢や目標がある人って、そう多くない。そういうテーマで映画を撮りたかった

― 『わたしのハワイの歩きかた』を楽しみにしているファンに、メッセージはありますか?

映画『わたしのハワイの歩きかた』

高田:

主人公は極端な行動に出ますが、ちょっとしたことだと思うんですよ。 毎日の生活をキープしながらでも、ちょっと毎日から外れたことをやることは不可能じゃないと思う。

前田:

そもそも本当の意味では、人生は振り切れないじゃないですか。 彼女も遊び倒してやるとか言いながら、ハワイに会社のお金で行ってしまうけれど、結局は現実と自分の問題からは逃れられない。 だから、日常の延長線上にいるわけですよね。ここから先は遊びでとか、人生とか現実って、実はそれほどパックリいけない。つながっているものなので。

高田:

だから、自分自身に戻ってくる話になるんです。現実に向き合うストーリーですね。

前田:

夢とか目標があって将来どうなりたい人を描いたわけじゃなくて、毎日働いている人を描いた。 サクセスとかじゃなくて。はっきりした夢や目標がある人って、そう多くはいないと思うんですよ。 でも働くことは好きで、その中には不満もあって。そういうことをテーマにした映画を撮りたかったんです。

高田:

夢とか目標があって頑張っている人がいるけれど、そういうことをまったく持ってあい人がもちろんいる。 でもそれを強く肯定していいと僕も思いますね。

― そして“脱出”は手軽にできるけれども、その先に待っている“現実”も大切ですよね。

映画『わたしのハワイの歩きかた』

前田:

そもそも脱出したいってことは、何かを抱えているわけで、現実逃避したくなるわけですよね。 でも結局は、そこに帰ってくるわけでしょう。気分転換、じゃないけれど(笑)。

高田:

なんだかんだ言いながら、一生逃げているわけにもいかないですからね。 人生、流されて生きているとわけわからなくなるけれど、1回思い切って現実を離れて、しばらくして自分の意志で戻った気分になれば、わりといい日々に変わるのではないでしょうか(笑)。

Profile


							前田弘二:
								1978年生まれ。鹿児島県出身。独学で自主映画を制作し、2005年に短編映画「女」「鵜野」がひろしま映像展2005においてグランプリと演技賞をダブル受賞。
								翌年には「古奈子は男選びが悪い」が第10回水戸短編映像際でグランプリを受賞する。
								また、2009年にはドイツ・フランクフルトで開催されたヨーロッパ最大の日本映画祭「Nippon Connection2009」において、
								「koji Maeda Special」と題された溶く驟雨が組まれる等、国内外でいま最も注目される若手監督の一人。
								劇場公開デビュー作となった「婚前特急」が高い評価を受け、数々の日本新人監督賞を受賞。本作が待望の劇場公開第2作目となる。
								最新作は『夫婦フーフー日記』 (2015年5月30日(土)全国公開予定)
							高田亮:
								1971年生まれ。東京都出身。2011年にヒットした「婚前特急」で一躍脚光を浴び、
								近年では、「さよなら渓谷」(13)、「銀の匙 Silver Spoon」(14)、「そこのみにて光輝く」(14)などの脚本を手掛けている、いま最も注目される脚本家の一人である。
(C) 2014 『わたしのハワイの歩きかた』製作委員会、取材・構成・撮影/鴇田 崇(OFFICE NIAGARA)
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