
映画業界に関わる著名人の方々に、様々な角度やテーマで映画にまつわるお話をまとめました。
桜田 ひより俳優
木戸 大聖俳優
桜田:
原作を読んでいたので演じたいと思っていた信子を演じることができるうれしさと、風間太樹監督とは三度目のお仕事だったのですが、どの作品も思い出に残っていて、自分が成長した部分もたくさんあったんです。なので今回の『モブ子の恋』も新たな自分の一面を引き出しつつ、一緒に素敵な信子を作り上げていけるように頑張りたいなと思いました。
木戸:
原作や台本を読みながら感じたことですが、ひとつのラブストーリーだけれども、互いに脇役と言われているふたりが時間をゆっくり紡いでいく物語は、ほかにないなと思いました。だからこそ小さなところに、こちらが包み込みたくなるようなふたりの可愛い部分、愛おしい部分を感じたので、しっかりと演じないといけないなと思いました。
桜田: 信子は自分のことを当たり前にいる脇役の存在と捉えていますが、それに対して卑屈になっている気持ちを持っているわけではなく、ただひっそりと自分の些細な楽しみや、前向きに懸命に生きている女の子なんです。ものすごくネガティブかと言われたらそういうわけでもなくて、ただ突出している部分がないというか、人から見たらマイナスな部分でも信子自身は受け入れている部分もあったりするので、ただただひっそりと過ごしている女の子なんだなと思いました。
木戸: 入江も感情を表に出すタイプではないなかで、むしろそれを出せないことを彼も卑屈に思っているわけではなく、それが自分だと認識しているんです。だからこそ信子の気持ちをわかってあげられるし、わかってあげようと思うし、彼女の頑張りや変わろうとしている姿勢に、何か自分でもできることはないかと悩む人なんです。吸収力はあるのに放出力が弱いので、“受け”が多くなるお芝居だから、とにかく視野を広く信子の言葉を聞き逃さないようにキャッチしようと、撮影中は常に思っていました。
桜田: 原作が持っている信子や入江君以外の登場人物の雰囲気もそのまま反映されていて、漫画から出てきて実際に生活していたらこんな感じなんだろうなと観てくださる方々も思っていただけるようなナチュラルな世界に仕上がっているなと思いました。原作の良さもすごく大切にしつつ、風間監督だからこそ描ける内面的な動きや流動的なものを、言葉のないシーンや表情で読み取っていけることは、この作品の良さじゃないかなと思っています。
木戸: 映像化された『モブ子の恋』はゆっくりと時間が流れていたので、僕も試写で観ていた時にいち観客としてストーリーを追いかけるのではなく、併走している感覚になるというか、それは新鮮な感覚でした。観ながら共感する時間が確保されているというか、だからこそ客観的ではなく、主観的に観られたと思うんです。自分自身と重ね合わせて観れるような感覚で、ゆっくりだからこそ共感性が高い作品になっていると思いました。
桜田:
わたしは基本的にひとりで映画を観に行くことが多くて、右か左の壁側の後方で観ていることが多いです。端っこだと自分の世界に浸れるような気がするんです。あとはポップコーンと飲みものを必ず買います。
木戸:
僕はど真ん中で観ます。そこが取れないなら、あきらめちゃうくらいです。僕もポップコーンと飲みものを買います。王道です(笑)。
桜田:
絶対行きます!
木戸:
僕は自分の作品を映画館で観たことがないかも…
桜田:
これを機に観ましょう(笑)
木戸:
そうですね(笑)。
桜田:
映画館でみなさんの意外な反応が知れるんです。「ここで歓声が上がるのか」とか。それって次のお芝居にもつながっていくと思いますし、劇場を出ていく方の表情などから、その作品が客観的にどう受け入れられているのだろうという分析にもなると思うんです。どう心が動かされたのか知ることで、次のものづくりにいかされていくような気がするんです。
桜田:
わたしは映画が生活の中心になっていた人間なので、映画にしかない魅力があると思っていて、わたし自身がお芝居に悩んでいた時にたくさんの映画を観て救われた感覚もありました。そういう支えられた経験があったからこそ、自分以外の誰かもきっと映画に救われた瞬間がある、人の人生を動かすエネルギーが映画にはあると思います。
木戸:
映画館へ映画を観に来る方々はそれぞれの想いや事情があると思いますが、みんなに共通していることは、2時間会話もせず、スマホもいじらず、映画に捧げてくださる。そのことへの責任感というか、僕たち出る側の人間には、映画の場合は特にあると思うんです。なのでしっかりやらないといけない、届けないといけないという想いがあります。
桜田: 信子という役柄を通して自分の弱さやマイナスなものに大きく触れて、自分の中に眠っていたものを信子に投影して大きくしていたので、自分自身を見つめ直すとてもいい時間でした。自分と向き合う時間はとても大切だけれど心がすり減ってしまうこともあるのですが、準備も含めて撮影期間中は、改めて自分を知るきっかけにもなったので、とても素敵な時間でした。なので、みなさんも映画を通して少しでも自分と向き合うきっかけになったり、自分の中に眠る信子の要素をしっかりと受け止めてほしいなと思いました。
木戸: 僕も入江を演じながら一番近くで信子を観ながら、僕も一緒で自分を見つめ直す瞬間がありました。言葉を大きく発せられる人が目立つし、言葉の力も強いと思うけれど、このふたりのように静かな沈黙の時間でもちゃんとパワーを持っているなと思いました。だから、似たような境遇の方がいたら、このふたりを観ることで、無理に発しなくてもいいと思ってもらえると思う。あなたは今のままで十分だよ、と肯定してくれる作品だと思いましたし、僕自身もそう感じることができた作品になりました。

BIOGRAPHY
2002年12月19日生まれ、千葉県出身。「明日、ママがいない」(14/NTV)、『祈りの幕が下りる時』(18)などで注目を集める。映画『交換ウソ日記』(23)で、第47回日本アカデミー賞「新人俳優賞」受賞。近年の映画出演作に、『バジーノイズ』(24)、『大きな玉ねぎの下で』(25)、『この夏の星を見る』(25)など。

BIOGRAPHY
1996年12月10日生まれ、福岡県出身。2022年、Netflixオリジナルシリーズ「First Love 初恋」で、佐藤健演じる主人公の若き頃を演じて注目を集める。主な出演作に、「ドラフトキング」(23、26)、「ゆりあ先生の赤い糸」(23)、「9ボーダー」(24)、「海のはじまり」(24)、『ゆきてかへらぬ』(25)、『WIND BREAKER』(25)など。