THE VOICE|special interview:「映画にかける思い」映画業界に関わる著名人の方々に、さまざまな角度やテーマで映画にまつわるお話をしていただきます。/VOICE94 俳優 ムロツヨシ

「ムロツヨシのイメージや技術的な芝居はすべて捨てて、現場や共演者の方たちとの空気を大事にしながら臨みました」

マイ・ダディ

-9/23(木・祝)に公開される『マイ・ダディ』。本作の台本を読んだ2時間後には「この世界にいたい」と思われたとお聞きしました。

僕は父親になったことはないけれど、信じていたものすべてが崩れ去ってしまった主人公の一男が、当たり前のように、病を患った娘のひかりのために奔走するところに惹かれたんです。なので、今回に関してはこれまでのムロツヨシのイメージや技術的な芝居はすべて捨てて、現場や共演者の方たちとの空気を大事にしながら臨みました。“何も用意しない演技”は初めてのアプローチだったので、最初は怖かったですけどね。

マイ・ダディ

―本作では、いま言われたムロさんと多彩な共演者とのお芝居が大きな魅力になっています。

ヒロインのオーディションから参加させていただいていたので、ひかりを演じた中田乃愛さんとのお芝居はいろいろな意味で刺激的でした。特に、自暴自棄になったひかりをナンパしようとしていたチンピラたちから救い出し、抱きしめるところは、この作品のいちばん肝になるシーン。娘の悲しみと諦めの目を見て、一男の瞳も少し狂気を帯びてくるし、行動も変わっていきますから。そこはお芝居に関しても一緒で、中田さんもあそこは苦しんでいたので、僕は役者としてできる限りのことを彼女にしてあげようと思いました。

マイ・ダディ

―亡くなった奥さん、江津子を演じられた奈緒さんとのシーンも微笑ましくて印象的でした。

奈緒さんとはすぐに打ち解けることができて、準備する時間は少なかったのですが、幸せな夫婦を演じることができました。彼女と一緒に、中田さんに誕生日プレゼントを贈ったこともありました。奈緒さんがうちに送ってくれた品物を僕が包装して(笑)。コロナ禍で撮影が去年の4月から12月に延びて、その間に役者としての喜びを共有できたのも大きかったですね。

「失敗しても、成功するまでやめない。そう、自分の中で何となく決めていたんです。」

マイ・ダディ

―ストリートミュージシャンのヒロを演じた毎熊克哉さんとのシーンはとても印象的でした。

深夜ドラマで共演した時から、自分と真逆のものを持っている毎熊くんのファンで(笑)。さっき話した、「ムロツヨシを1回捨てて臨んだ」今回の芝居の中には、彼に刺激されて出てきたものがたくさんあるんです。そのシーンは現場でもちょっとした高揚感で、ドキドキしながらやっていた思い出がありますね。

―本作は意外なことに、ムロさんの初主演映画です。ここに辿り着くまでには、演じられた一男と同じように多くの試練があったと思いますが、ムロさんはそれをどのように乗り越えられてきたのでしょうか?

失敗しても、成功するまでやめない。そう、自分の中で何となく決めていたんです。失敗したら、それを記憶して、次の新しい場所では同じ失敗をしないようにする。その繰り返しでしたけど、やめなかったのは、やっぱり意地ですかね(笑)。

Profile

ムロツヨシ 俳優 御堂一男役 1976 年生まれ、神奈川県出身。99年に作・演出を行った舞台で活動を始める。近年の作品に、現在放送中のドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(21)、「大恋愛〜僕を忘れる君と」(18)、『最高の人生の見つけ方』(19)、『今日から俺は‼ 劇場版』(20)、「親バカ青春白書」(20)、 『新解釈・三國志』(20) など。公開待機作に『川っぺりムコリッタ』(11月3日公開)など。
撮影=野崎航正 取材・文=イソガイマサト

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