THE VOICE|special interview:「映画にかける思い」映画業界に関わる著名人の方々に、さまざまな角度やテーマで映画にまつわるお話をしていただきます。/VOICE95 女優 土屋太鳳

「AIのシオンが人間の気持ちになり始める瞬間は、意識して声を演じました」

アイの歌声を聴かせて

-不思議な転校生・シオンと孤独なサトミが、歌で繋がる物語『アイの歌声を聴かせて』(10/29公開)。完成した作品の感想を教えてください。

アニメの画が完全に完成していない状態でアフレコをしたので、『こんなにキラキラしていたんだ!』とか『こんなリアルな表情をしていたんだ!』と、驚きがたくさんありました。インターネットの世界にグーッと入っていく瞬間も、その世界観がすごく感じられるようになっていて衝撃でした

アイの歌声を聴かせて

―土屋さんが演じたシオンは、なんとAI(人工知能)という設定です。

監督から『シオンは人間のような完璧なAIなので、人間っぽく演じていい』と言われたので、AIということはあまり意識しませんでした。ただ、シオンが人間の気持ちになり始める瞬間は、自分の中で意識しておいた方が声にも微妙なニュアンスが出ていいだろうと思ったので、終盤は、それを意識して声を演じました。人間になれる嬉しさと、なり切れない切なさや虚しさも感じて。その多面性が、シオンの見どころだと思います

アイの歌声を聴かせて

―シオンとして歌う、土屋さんの歌唱が素晴らしかったです!

フルで4曲も歌うので、恐怖との闘いでした(笑)。 約2か月間、練習する時間をいただき、ボイスレッスンを通して、声の出し方がハッキリ変わったのは自分でも分かりました。3曲目の『Lead Your Partner』までは、“シオンになりたい”という私の想いと、シオンが“人間になりたい”という想いがリンクして歌うことが出来ました。でも同時期にミュージカル舞台と重なったことで私の喉を痛めてしまい、1週間声が出せなくなって…。4曲目の『You've Got Friends 〜あなたには友達がいる〜』は舞台後に改めて収録しました。高域が多い曲なので難しかったです

「目の前の小さな幸せを感じた方が、見えない不安に負けずに踏ん張れる」

アイの歌声を聴かせて

―シオンは常に「いま、しあわせ?」と聞きますが、土屋さんは今、幸せですか?

多分、幸せです。“幸せ”と聞かれると、人は大きな幸せを思い浮かべがちですが、健康で、家族や友達がいて、ご飯が美味しいとか、こんなお話が出来たとか、目の前の小さな幸せを感じた方が、見えない不安に負けずに踏ん張れると思うんです。同時にそういう小さな幸せは、自分の努力が必要だとも思っています。シオンのように相手に見返りを求めないスタンスで何かをすることが大事で、その方が自分もちょっとした幸せを感じられる、とも教えられました

―周りの友達も個性豊かで魅力的です。お気に入りのキャラクターはいますか?

それぞれ魅力がありますが、サンダーは親友になりたいナイスガイです。いつも本番試合では負けてしまうけれど、勝てなくても腐らず、ちゃんと練習しているところがステキで。そういう人って、必要とされたときにちゃんと力を発揮できると思いました。トウマも次にどんな発言をするのか、とても気になる男の子でした

アイの歌声を聴かせて

―女子の憧れの男子“ゴッちゃん”が、実は「1番になれない、俺はいつも80点だ」とコンプレックスを抱いている意外さも、いいアクセントでした。

その気持ちはわかる気がしました。例えば小さな頃、日本舞踊大会に出ると、姉と弟は必ず本戦に進んで全国で賞を獲るのですが、私はいつも次点止まりで本戦には進めなくて…。だから彼のコンプレックスを理解できますし、でも同時に『80点でもスゴいんだよ!!』と言ってあげたかったです。私が落ち込んでいると、母が“要”(扇子を開く時に、根本で骨を止めている部分)の話をしてくれて。『扇子には要があるでしょ。要がないと、一枚一枚バラバラになってしまう。太鳳は兄弟姉妹の要だからね』と。だから私は、ずっと“要”になろうと思っているんです。母がいなかったら、いまの私はいなかったと思います

Profile

土屋太鳳 女優 シオン役 1995年生まれ、東京都出身。15年の連続テレビ小説「まれ」(15)で国民的女優に。映画やドラマ、舞台のほか、SIAの日本版MV「ALIVE」でのダンスパフォーマンスや、MV「クラシック・マッシュアップ」でのピアノ演奏など幅広く活躍。NHK「シブヤノオト」(土)23:10〜ではMCを務め、Netflix「今際の国のアリス SEASON2」ほか、、『大怪獣のあとしまつ』(22年公開予定)など待機作が多数。
撮影=野崎航正 取材・文=折田千鶴子

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